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12. 新しい投資尺度には「ご用心」
■2回にわたって投資尺度の話をいたしましたが、最後にもうひとつ注意していただきたいことをお話します。突如として聞いたこともないような投資尺度が語られだした時は要注意ということです。機関投資家の場合は、それぞれに運用成果を高めるため独自の投資尺度を開発して、銘柄選択や売買のタイミングを考えるのに利用していますが、これはそれぞれのノウハウであり、外部には明かさず秘密のベールに包まれています。これを公表して競争相手に塩を送る必要はないからです。ところが、証券業者やアナリストが新しい投資尺度を開発して、これを使用して銘柄を推奨するケースがあります。そうした新しい投資尺度で株価を説明しようとする時はその新しい投資尺度を自分なりによく理解して対応してください。
■最近の例としては株価売上高レシオ(PSR)と称する尺度があります。時価総額を売上高で割って何倍かというものです。99年に米国でネット関連株の株価を説明するために開発され、日本でも99年夏ごろからネット関連株の株価を正当化する尺度として利用されだしました。ネット関連株というのは米国でも日本でも新興企業が多く、まだ利益が出ていない企業が少なくありません。利益が赤字状態では一般的な投資尺度である株価収益比率は使用できません。そこで株価売上高レシオなる尺度が開発されたわけですが、これが利益の出ているネット関連株、IT関連株にまで利用されて、株価収益比率では100倍以上にもなるような銘柄の株価水準を正当化しようとしました。この結果がどうなったかは多くを語る必要もないと思います。後に株価が下落したから申し上げているわけではありません。バブル株価の説明の為に新しい尺度が考え出される場合があるからご用心と申し上げているわけです。
■既存の投資尺度で株価水準を説明できないため新しい投資尺度が開発され、これで株価を正当化しようとしたことは日本のバブル相場の最終段階でも経験したことです。当時は東京ベイエリア開発が相場テーマとなり、I重工業やTガスなどが株価収益比率ではとても説明できないような水準にまで買い上げられました。この株価の妥当性を説明するためにQレシオという新しい投資尺度が開発されました。これは土地の含み益を加えた1株当たり純資産で株価水準をみるというものです。これが登場したのが88年の秋でした。それから1年余りで相場は大天井をつけて、以後長期の下落基調をたどり、特にQレシオを手がかりに買われた銘柄は惨憺たるものになりました。新しい投資尺度で株価を説明しようとする時の銘柄群には用心して対応することが賢明だということです。
■このように株価収益比率など従来の投資尺度で説明できないために新しい投資尺度が考案され、これを手がかりに株価水準を正当化しようとする時は、こうした銘柄グループの株価水準はピークに近付いている場合があると考えてください。現在ではQレシオ、株価売上高倍率ともに話題にもならなくなっています。「新しい投資尺度にはご用心」ということを記憶にとどめておいてください。
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