← 27章へ戻る | コラムトップへ戻る ↑ | 29章へ進む →


28. 買値は忘れてしまった方がよい

前回触れたナンピン買いについて続きの話をします。ナンピン戦略は、買値から株価が下がったから下値を買ってコストを引き下げ、最初の買値まで戻らなくとも利食いのチャンスを作ろうというのが基本的な考え方です。ですからナンピン買いは多くの投資雑誌で戦略として取り上げられます。しかし、ナンピンが必ずしも投資の成功につながるものではありません。特にジリジリ下げる陰性の下げではナンピンは避けるべきだと言われています。陽性の下げで大きくドンと下げたときは一時的に反発するものですが、こうした時にはナンピンは損を少なくするという点では有効な場合もあるでしょう。平均コストまで戻らなくともナンピン買いした分が利食いになり、最初に買った分の損を少しは消してくれるからです。ところが、平均コスト以上まで戻ったら売ろうと考える人がほとんどです。しかし、平均コスト直前で再び下げてしまうということも多く損の上塗りになってしまう場合もあることも銘記すべきです。
 
これは買値にこだわってしまうからです。このような実例があります。1998年通信大手のN社が166万6000円で売り出しを行ないました。その後IT人気もあって上昇し194万円の高値をつけました。この上昇過程でアナリストの220万円目標という記事を読んで185万円で買った投資家の話です。しかし株価は逆にその後値下がりし、売り出し価格を割り込んでしまいました。担当者に相談したら売り出し価格を大きく割り込んでいる今はナンピンのチャンスということで、昨年5月に145万円でナンピンし、平均コストを165万円に引き下げました。その後7月にかけて戻ったのですが戻り高値は160万円、もう少しで利食いになると考えて売却せず、結局は現在も持ち続けています。ナンピンしないで持ち続けたとして評価損は105万円ですが、ナンピンしたために評価損失は170万円に膨らんでいます。160万円の戻りで売却していれば、損は10万円、ナンピンした時に逆に売却していれば損は40万円で済んでいます。平均コストの160万円にこだわった結果です。
 
買値にこだわりすぎるとこうしたことが起きてしまうこともあります。ですから買った後は買値を忘れるくらいの方がよいのです。そうすれば、単純に自らの相場の判断に基づいて売却の判断を行うことができます。買値にこだわったために何度も戻り場面をみながら売却チャンスを逃し、大きな損失につながるということもあります。先のN社の例でも平均コストにこだわらなければ、160万円まで戻って再び下げてきた段階で、少なくも後で買った分は損なしに売却できたはずです。買値を忘れなさいといっても難しいことですが、これにこだわることが大怪我につながることだけは念頭に置いて頂きたいと思います。

 

Copyright (C) 2000 Infobank Co.,Ltd.  All rights reserved.